798芸術区@北京

中国現代アートの勢いがとまらない。この国はプロパガンダ的メッセージをNetに書き込んだり書籍出版したら検閲でひっかかり、あとで面倒な結末が待っていることが多い。でもそんなメッセージを文字ではなく美術や芸術で上手に表現できたら、「お咎め」されるようなことも少ない。そこには「表現の自由」が存在する。そんなことも魅力の一つなのではないかなと最近感じている。

「美術の五輪」でも注目 アジアの現代アートが台頭 :日本経済新聞

アジアの現代美術のうねりは大きい。牽引(けんいん)しているのが経済成長の著しい中国であるのは、当然とも言えるだろう。年間の取引額が3兆円にも及ぶと報じられる中国の美術市場では、現代作家の作品も多く取引され、日本円換算で1点が1億円を超える落札もざらにあるという。金ばかりが美術を育てる要件ではないが、活性化した市場経済の中で才能が芽吹くのは自然の理だ 

そんな中国現代アートの中心地、今では観光地としても有名な北京798芸術区を散歩してきました。ここは廃工場に出来たアートスポットで、ふらっと寄るには、規模が大きく中国という国のスケールサイズを感じずにはいられない場所です。

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UCCA:ユーレンス現代美術センタは、798芸術区で2007年に開館した北京現代アートの中心的な場所だ。スイスのガイ・アンド・ミリアム・ユーレンス財団が運営し、ベルギー出身のギー&ミリアム・ユランス夫妻が収集した中国現代美術作品の展示を中心に、企画展、セミナーなどが開催されている。館内を自由に撮影できる自由な雰囲気があるのも魅力の一つである。

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南アフリカの美術家 WILLIAM KENTRIDGEさんの「Notes Towards a Model Opera」企画展が開催されていた。

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ウィリアム・ケントリッジ (William Kentridge)

南アフリカ / 1955年4月28日
美術家

「素描とアニメーション等を融合させた新しい表現メディアを創出し、独自の世界を切り拓いた芸術家」 素描という伝統的技法をアニメーションやビデオ・プロジェクション等の多様なメディアの中に展開させながら、諸メディアが重層的に融合する現代的な新しい表現メディアを創り出し、社会と人間存在に対する深い洞察を豊かなポエジーをもって表現する独自の世界を創始した。稲盛財団」

 

今回の企画展では、この素描をコマ撮りにした「動くドローイング」と呼ばれる手描きアニメーション・フィルムで、2つの作品が上映されていた

一つ目は2002年に制作され、京都国際現代芸術祭でも放映された「The Refusal of Time」。ハーバード大学で歴史を研究するPeter Galisonさんとの会話から思いつき、南アフリカの作曲家Phillip Millerさんが音楽制作し、南アフリカDancerのData Maslioさんとのコラボで生まれた作品である。作品の内容より、木炭とパステルで描いたドローイングを部分的に描き直しながら、その変化を1コマ毎に撮影する気の遠くなるような作業を、本当に長い時間をかけてコツコツと作り上げ、それを5チャンネルのビデオで放映するこの作品の存在感に圧倒されてしまった。

世界に衝撃を与えた、ウィリアム・ケントリッジ「時間の抵抗」が京都にやってくる! | News&Topics | Pen Online

時間に関する考察は人それぞれ。この映像を制作するのにかかった「時間の長さ」と「根気」に感服です。

 

もう一つはこの企画展のために新しく作られた10分程のフィルム「Notes Towards a Model Opera」。1950年代のヨハネスブルグでのコロニアル政策、上海文化大革命、1871年パリ、血の一週間を連想させる3か所の地図を背景に、革命を連想させる旗をもって踊る黒人女性ダンサー。世界が現代化してく過程でこのような歴史的事実があったこと表現しているのであろう。このような映像がここ中国北京で上映できることがすごいことなんだろうな。いつか日本のどこかの現代美術際とかで、この映像が見れる日が来るのかな。

 

 WILLIAM KENTRIDGEさんは南アフリカ出身。人種差別政策アパルトヘイトに対する抗議の意味もあり、白黒タッチの絵を描くことが多いとのことです。

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UCCA以外にも北京798芸術区は本当に沢山のギャラリースペースがある。昔に比べればかなり「俗化した」との話をよく聞く。確かに、そんなに大したギャラリーでもないのにお金を取ったり、その割には展示内容がお粗末だったりするのも見受けられるので、そう感じることも多いのも事実。商売になるとわかると、皆がよってたかってやり始める、だから俗化する。でもそんなことはある意味海外では当たり前。すべては自己責任で自分の直感を信じ、様々なハプニングを楽しめるくらいの気持ちで、良さげなギャラリーに突撃してみてるのが良いのかなと思う。現代アートを広い心をもって受け入れながら散歩できることができたら、ここはきっといい場所だと思います。

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